吉田 重子 様
使用機器:ブレイルメモスマート40
ユーザーの方々にケージーエス製品の活用方法を語っていただく『コラム「ケージーエス製品 私はこう使う!」』
今回は、元視覚支援学校教諭の吉田重子様に、点字ディスプレイに関する思いや今までの使い方などについて文章を書いていただきました。
熱い思いが伝わってきます。どうぞお読みください。
点字ディスプレイとの出会いと、その使用
ブレイルノートやブレイルメモなど、いわゆる点字ディスプレイに初めて触れたのは、全国レベルの研修会等に併せて開設される機器展示会であった。
そして、1995年、我が家に初めてやってきた点字ディスプレイはブレイルノート40A。視覚支援学校に勤務しながら、夜間の大学院に行っていた私にとっては、膨大な点訳資料が紙や本の山にならないこと、また、文章が自由に加筆修正できて文章遂行の自由を味わえることを喜んだ。この機器は、3年ほど前まで点字のピンが薄れながらも、我が家で現役で頑張っていた。
続く、ブレイルノート46Xの使用。点字資料を持ち歩く煩雑さ、つまり、その日必要とする資料の箇所を当たりを付けて、バインダーから取り出し、カバンに入れるという前日の準備から解放してくれた。
次に手にしたブレイルメモポケット16。小さなバッグに入れて、どこにでも持ち歩く。私は、様々な講演会を聞きに行くことが多く、座席がひしめき合う会場でも、ひょいとスイッチを入れれば、どんな場所でも音を立てずにメモできる魅力がある。今でも、毎日持ち歩く必需品の一つだ。
2010年、点字ディスプレイを単一視覚障害者にも日常生活用具として支給対象品目に加えてほしい旨の署名を集め、札幌市に陳情書を提出した。そして、札幌市議会厚生委員会において、趣旨説明の機会をいただいた。その中で私は、「今ここにお集まりの皆様は、会合の進行にそって、配布された資料にメモを書き込んだりしておられるでしょう。皆様にとって、このごく当たり前の日常の動作が私たち点字使用者にはこれまで不可能なことでした。点字というものは、あらかじめ点字が打たれた紙に、後でメモを書き込むことができません。しかし、それを可能にしてくれるのが、この点字ディスプレイです。(中略)私にとって、大学生の時から、資料に、自分が大事だと思ったこと等々を書き込むという学びの行動は憧れでした。今私たちが要望しているこの機器では、それが可能になり、これからの教育や就労に大きな力をもたらすでしょう。」と訴え、翌年採択された。
その後購入したブレイルメモ32は、毎時間の授業中のパートナーとして、いろいろな資料を詰め込んで持ち歩いた。そして、ストップウォッチやアラーム機能も有効に活用した。
さらに、ブレイルメモスマート40を持って、やっと、英和・和英辞書や国語辞書などを持ち歩いている感覚を得ることができた。授業中、辞書に掲載されている表現を自由に引用できることは、念願であった。テキストファイルやワードファイルを読み込めることも、資料を持ち歩くうえでは、可能性が広がった。また、この機器では、授業の録音や英語のリスニングなどにMP3の音源を聞きながらメモを取ることができるという勉強法の一つを生徒たちに伝えた。これからの大学進学に際して大きな力になると期待している。
長年にわたる点字ディスプレイの使用を振り返って
このように並べてみると、私は当社の機器を5台使用してきたことになる。それでいて、最新の機器は持っていない。開発が進むことによって、便利さが増すことは喜ばしい。しかし、時には進化と引き換えに失うものもある。最後に今後に向けての希望を述べるならば、ここに書いても仕方がないこととは知りつつ、残しておいてほしかったものをあげておきたい。それは、シンプルさだ。多機能化は一つの大きな魅力ではあるが、一方で、点字に特化した、操作性のシンプルな機器は1種くらいは残しておいてもよかったのではないか。需要は案外あるようにも思うのだが…。
堅いピンの上で指先を滑らせるのはいやだといった友人もいたけれど、私は、今日も指先をちょっとピリピリさせながら、文字を読んでいる!
ブレイルメモスマートAir16/32は、仕事に勉強にそして生活にと、いつでもどこでも点字と音声を利用した快適なモバイル環境を実現するコンパクトでクールな次世代型点字ディスプレイです。