お知らせ

「ケージーエス製品 私はこう使う!」第47回

2020.01.20

東京大学 先端科学技術研究センター 大河内 直之 様
使用機器:ブレイルメモスマートシリーズ / BMスマートターミナル
使用内容:盲ろう者の電子メールの使用

大河内 直之 様 の写真
大河内 直之 様

ユーザーの方々にケージーエス製品の活用方法を語っていただく『コラム「ケージーエス製品 私はこう使う!」』

今回は、東京大学 先端科学技術研究センターの大河内様に、ブレイルメモスマートシリーズ(以下、ブレイルメモスマート)とAndroidアプリ 「BMスマートターミナル」を用いた使用方法の可能性について伺ってきました。
大河内様は視覚障害の当事者でありながら、大学での研究の一環で、盲ろう者が扱う視覚障害者向け機器について、盲ろう者にとって「どの機能」が「どのように扱えるか」を整理し、盲ろう者や機器メーカーに提案を行うサポート活動を行っています。

今回は久しぶりに前後編構成でのご紹介です。まずは、BMスマートターミナルのメール機能と、盲ろう者にとってのメール機能の必要性について、ご覧ください。

盲ろう者にとって電子メールは、非常に大切なコミュニケーション手段

ブレイルメモスマートとAndroidアプリ「BMスマートターミナル」の組み合わせにおいて、電子メール機能は盲ろう者にとって、とてもニーズの高い機能となります。

盲ろう者にとって電子メールは、非常に大切なコミュニケーション手段です。
電子メールは盲ろう者にとって、パソコンを利用するうえで、主要なアプリケーションとなります。パソコンの訓練をする際には、電子メールの使い方から教えるのがセオリーです。それぐらい電子メールは重要なツールとなっています。

電子メールが利用されている理由として、FAXの代わりということが挙げられます。
ろうベース(「聞こえにくい/聞こえない」といった聴覚の障害を先に発症し、後に、「見えにくい/見えない」といった視覚の障害を発症したケース)の方が、見えていたろう者だったときに、FAXや携帯電話のメールを通信手段に使用していたのが、見えなくなり、それらが使えなくなった際、代わりとなる通信手段として、利用されるのが電子メールなんだと思います。
電子メールであれば、パソコンのスクリーンリーダーに点字ディスプレイを接続して、点字表示させることで、電子メールを触読することができます。

現在では、LINEなどのSNSがありますが、そういったものは情報がすぐに更新されて流れてしまうことで、なかなか追うことができないため、盲ろう者が利用する点字触読での通信手段としては、とても使いにくいものとなっています。それに対して、電子メールは、自分のペースで送受信を行い、ゆっくり点字の触読をすることができます。
盲ろう者にとって、しっかりと、相手とのつながっている感覚を確認でき、享受できる通信手段が電子メールです。そのため、盲ろう者にとって、電子メールは重要な通信手段になっていると思います。

BMスマートのメール機能画面スクリーンショット
BMスマートのメール機能画面

外出先での電子メールを行う手段として、13年ぶりに出てきた新たな選択肢

90年代の後半、パソコンと点字ディスプレイを接続して、電子メールを使用することで、通訳者を介さずに、盲ろう者が自宅にいながら、他者と直接コミュ二ケーションを取れるようになりました。この頃、Windows98向けスクリーンリーダーの、点字ディスプレイへの対応が進み、また、2000年に日常生活用具として、盲ろう者への点字ディスプレイの給付が開始されたことで、爆発的に点字ディスプレイでの電子メールの使用が増えました。
しかし、これはあくまで固定環境下での話であり、自宅や職場から一歩出てしまうと、盲ろう者は電子メールが利用できない状況でした。この頃、世間では、「iモード」などの携帯電話サービスの発展により、メールを外で利用すること自体は可能となっていましたが、盲ろう者が外で電子メールを利用する際は、ノートパソコン、PHS、点字ディスプレイを組み合わせる必要があり、何台も機械を持ち運ばなければならなかったので、とても現実的ではありませんでした。

2006年に、電子メール対応の韓国製点字ディスプレイが登場したことで、盲ろう者は初めて、電子メールを外に持ち出すことができるようになりました。
幸か不幸か、残念ながら、現在に至るまで、この韓国製点字ディスプレイでしか、点字環境での電子メールの持ち運びが実現できておりません。

今回の「BMスマートターミナル」の登場は、盲ろう者が外出先での電子メールを行う手段として、13年ぶりに出てきた新たな選択肢となります。

このことが、僕はとても大きな事だと考えています。