技術解説

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ソレノイド技術解説

ソレノイドの技術解説です。知りたい項目をクリックしてください。

DCソレノイドは、電気エネルギーを機械的な直線運動に変換させる電磁機能部品です。KGSのDCソレノイドは下記の特徴を有し、数多くの産業の用途に使用されています。
当カタログの標準モデル品をベースに、お客様に合わせた、特性の製品を提供しています。
豊富な当社の製品シリーズから、お客様の設計仕様を満たす製品をお選び下さい。

  1. 制御性の良さ
    • 動作させる時だけ通電する、制御性に優れる。
    • 応答(動作)時間が、速く、一定であるため制御性に優れる。
  2. 応用性の高さ
    • コイル仕様と鉄心の先端形状を変えることにより、負荷に合わせた吸引力特性が得られる。
    • 通電方法により、吸引力の上昇が図れる。
  3. 安全への対応
    • 逆起電圧をダイオード内蔵で解決。
    • 異常なコイル温度上昇を温度ヒューズ内蔵で安全に。
  4. 作業性への対応
    • ジョイント部はリンク部品の形状に応じて変更可能。
    • リード線の端末にコネクタ等の装着が可能。
  5. 信頼性・低騒音化への対応
    • 摺動部の表面処理によって動作耐久性(寿命)を延ばすことができる。
    • 可動鉄心の動作音も減音化可能。

KGSのソレノイドは図1のように磁気回路となるフレーム・可動鉄心・固定鉄心・及び励磁用コイルから成り立ちます。

KGSソレノイドは、SDC-0740(7M)、KPS-0730(7X)、のように記号と数字とアルファベットで、機種を表現します。
※ただし、CA、チューブラ型は除きます。

外観寸法図は吸着時の状態です。

  • 通電率については、6項(連続定格と間欠定格)を参照ください。
  • コイル温度上昇分に周囲温度を加えた温度が、コイル温度になります。8項(温度上昇の測定方法)を参照ください。
  • 連続定格の温度上昇分は65℃を超えないため、カタログのグラフから除いてあります。
  • 吸引力特性データは、コイル温度20℃における初期平均特性値です。

■ SDC-0740(7M) 標準コイル数

電圧[V] 通電率[%] 抵抗[Ω]±10%
at20℃
消費電力[W] 電流[mA]
6V 連続[100%] 12Ω 3W 500mA
12V 連続[100%] 48Ω 3W 250mA
24V 連続[100%] 192Ω 3W 125mA
6V 間欠[25%] 12W 2,000mA
12V 間欠[25%] 12Ω 12W 1,000mA
24V 間欠[25%] 48Ω 12W 500mA

標準コイル表は、連続(通電率100%)と間欠(通電率50%、25%、10%)の場合の使用電圧、抵抗値、消費電力、電流値の関係を示しています。
間欠で通電率50%、25%、10%以外のコイル抵抗値については「5.グラフからの抵抗値の求め方」「6.連続定格と間欠定格」を参照ください。

このカタログの吸引力特性グラフから消費電力(P)がわかります。使用される電圧値(E)はお客様によって決められますので、次の式から抵抗値(R)が求められます。

(例)SDC-0740(7M)は連続消費電力は約3Wです。電圧12Vで使用する場合のコイル抵抗値の算出は、下記の通りになります。

定格には連続定格と間欠定格とがあります。

  • 連続定格
    周囲温度40℃において、連続して何時間通電してもコイル温度が65℃以下になるように設計しています。連続通電できる定格です。
  • 間欠定格
    連続定格よりも数倍の吸引力が得られる反面、消費電力増となり、秒きざみでコイル温度が上昇(カタログのコイル温度上昇特性参照)するので、通電(ON)時間と遮断(OFF)時間の割合である「通電率」から、最適のソレノイドを選ぶことが必要です。

■ 通電率(DUTY CYCLE と表現することもあります)の求め方

DCソレノイドの吸引力は、ストロークが小さくなるほど急激に大きくなります。従って、吸引後のソレノイドの力(保持力)は負荷に対して余裕があり過ぎる傾向にあります。このムダな電力を少なくする使いかたが半間欠通電使用と呼んでいる方法です。つまり吸引動作の間は大きい電力を与え、動作完了後は、負荷を保持するのに必要なだけの電力に落とす使い方です。
半間欠通電には、次の3つの方法があります。

  1. 吸引・吸着後、電流値をPWM制御する。
  2. コイルに印加する電圧値を吸引・吸着後に下げる。
  3. ダブルコイル方式
    2つのコイルに中間タップを設け、3本のリード線を引出し、駆動回路側でコイル端子を切り替えて吸引完了後の電力を下げる。

温度上昇の測定には、水銀あるいはアルコール温度計を用いる温度計法が簡単で一般的な方法ですが、ソレノイドの場合、コイルの温度上昇は内部から外部へ向かっての温度傾斜がかなり大きいため外側の温度計測では、コイル温度の正しい値が得られません。そのため、銅の抵抗温度係数を利用した抵抗法によって平均温度を測定する方式がとられています。

・抵抗法計算式は下記のようになります

この式よりt2 を求めると

・温度上昇分θ は、求めたt2 より

で求められます。
上記(1)、(2)式を変型して計算に便利な形にすれば、抵抗法による簡易な温度計算式となります。

ソレノイドのコイル温度上昇分と周囲温度の和によって、ソレノイドに使用される絶縁材料は、JISC4003電気機器耐熱クラスの種類(105[A]、120[E]、130[B])などの制約を受けます。当社のソレノイドは『105[A]』のものを標準にしています。標準の105[A]だけでなく、120[E]、130[B]の製作も可能です。使用条件や周囲温度の条件により、耐熱クラスをアップさせたい場合は、当社までお問い合わせください。
仕様についてのお問い合わせの際は、周囲温度の範囲についてもお知らせください。
使用温度範囲は、18項を参照ください。

ソレノイドには入力部が端子方式のものと、リード線方式のものがあります。カタログは、リード線方式にて編集してありますが、端子方式も生産しています。
また、リード線の先端部にコネクタを装着することも可能です。詳細は、当社までお問い合わせください。

ソレノイドの吸引力変動要因として、以下のことが考えられます。

1.コイル温度変化による吸引力値の変動

吸引・保持力は理論上起磁力(アンペアターン:AT)の2乗に比例します。コイル(銅線)の巻数は一定なので、電流値の2乗に比例するとも言えます。
コイルの温度が変化すると、銅線の抵抗値は表の抵抗係数を掛けた値に変化します。従って、吸引・保持力も理論上、吸引・保持力係数を掛けた値に変化します。つまり、温度が上昇すると抵抗値が上がり、電流値は下がることになり、吸引・保持力は低下します。

温度(℃) 0 20 60 100 120
抵抗係数 0.92 1 1.16 1.31 1.39
吸引・保持力係数 1.18 1.00 0.75 0.58 0.52

理論的には、コイル温度100℃の時の吸引力特性は、カタログ記載の初期の値の0.58倍になります。

2.電圧変動による吸引力値の変動

電源電圧の変化が吸引力に及ぼす影響については、次の2つの場合が考えられます。

  1. 電源電圧の変化がコイルの温度上昇に影響を与えない場合。
    電源電圧の変動がきわめて短時間の場合やソレノイドの使用時間がきわめて短い場合等は、電源電圧の変動がそのまま起磁力の変化となり、吸引力の変化となります。
  2. 電源電圧の変化がコイルの温度上昇に影響を与える場合。
    電源電圧の変化がコイルの温度上昇に影響を与える場合、電源電圧の変動により吸引力値も変化しますが、同時にコイルの温度も変化します。これによる吸引力値への影響と複合するので、電源電圧の変動の範囲を予め特定して、吸引力値の変動の範囲を知ることが、ソレノイドを有効に使用する秘訣となります。

当社では、SDCタイプはC形、KPSタイプはF形とFT形の鉄心形状を標準としています。
お客様の要求される吸引力特性に合わせた鉄心形状に変更することも可能です。
下図にその特性の違いを示します。

ソレノイドは、可動鉄心が吸引され固定鉄心に衝突したときに金属音が発生します。その金属音を緩和する消音タイプも製作しています。
消音タイプとは、可動鉄心が吸引されても固定鉄心に直接当たらないよう緩衝物で、約1mmのエアーギャップを設け、金属音を発生させないようにしたものです。
ただし、カタログの吸引力特性曲線は、使用ストロークに対して1mm を加えた値でお読みください。

ソレノイドの寿命は、可動鉄心とガイド(黄銅パイプ)摺動面の機械的磨耗に大きく左右されます。DC ソレノイドでは、この摺動部に摩擦係数を少なくする処理を施し、寿命を延ばすことが可能です。
可動鉄心の表面処理はニッケルメッキ、モリブデン処理、テフロン処理の3種類があり、一部の機種では、ガイドに黄銅パイプを内蔵せず、ボビンが直接ガイドとなっているパイプレスタイプもございます。

可動鉄心の処理 黄銅パイプの処理 寿命
ニッケルメッキ 酸洗い 3~5 万回
モリブデン処理 酸洗い 30~50 万回
モリブデン処理 モリブデン処理 100 万回
テフロン処理 モリブデン処理 300 万回超

この表に示された寿命についても、負荷・ストローク・ソレノイドの吸引力・断続動作条件・周囲温度条件等により相違が発生します。ソレノイドを使用する機器の耐用年数、使用頻度から、ソレノイドに対する必要寿命回数が設定できますが、この設定した寿命回数に対し、30~50%の余裕を有するソレノイドを選ぶことが適切とされています。お客様が安全設計をされるとき、吸引力等に過剰な安全マージンを設定される場合がありますが、これは寿命に悪影響を及ぼすことがあります。設計の際は当社までご相談ください。
寿命回数はソレノイドの使用条件や取付状態に左右されるので、使用する機器に実装してテストを行い確認できれば理想的です。
摩擦係数が増加し動作不完全となったソレノイドには、鉄心の先端部の一方向部分が磨耗しているケースが多くあります。これは可動鉄心の動作方向に対して、直角方向の分力が掛かっていたことを示しており、これの改善で寿命を延ばすことに成功した例は多くあります。従って、可動鉄心、パイプの組合せだけでなく、ソレノイドにかかる負荷の与え方についての考慮が長寿命の秘訣です。

鉄を磁界中で磁化させた後、磁界を取り去っても鉄に僅かな磁束が残ります。この磁束を残留磁束、または残留磁気と呼びます。
ソレノイドに通電して鉄心が吸引した後、通電を切った場合にも磁路中に残留磁気が発生します。この残留磁気による保持力を残留保持力と呼び、鉄心を戻す時の戻し力を決める目安となります。
残留保持力は、鉄心保持面の形状(面積)と磁気回路の磁化特性、励磁起磁力の大きさ等によって決まります。このカタログに記載されている特性のものでは、小さい機種(鉄心径φ7 以下)で20~30g、大きい機種(鉄心径φ8 以上)で50~70g 程度あります。カタログ記載以外で保持力の大きいF 形、FT 形(図5 参照)の鉄心では、200~300g になるものもあります。
鉄心の戻し力は、この残留保持力と、摩擦力、鉄心の質量を加味して決める必要があり、少なくとも下記の戻し力が必要となります。

消音付のソレノイドでは、鉄心間にエアー・ギャップがあるため残留磁気は非常に小さな値となり、残留保持力も殆ど0 になります。従って戻し力は鉄心自重と摩擦力に若干の余裕を加えればよいことになります。
永久磁石を使った自己保持形ソレノイドの戻し力については、「19.自己保持形ソレノイド(KPS)動作説明の解説を参照してください。

電気回路の故障等により異常通電された場合や、周囲温度が異常に上昇する恐れのある場合は、コイルの焼損、発火を予防することが安全上求められます。温度ヒューズを内蔵することにより、未然に確実にそのような事故を防ぐことが可能となります。ご注文により温度ヒューズ内蔵のソレノイドを製作していますので、詳細お問い合わせください。
また、逆起電圧吸収のためダイオードを内蔵させるソレノイドもご注文により製作しております。
温度ヒューズ、ダイオード両方を内蔵するソレノイドについても承っております。ソレノイドのサイズ、コイル外装ふくらみ等制約事項もありますので、詳細は、当社までお問い合わせください。

駆動させるための電源は、安定化電源、バッテリー電源等の直流電源を使用して下さい。AC 電源を整流にして使用する場合、半波整流未平滑回路ではソレノイドに励磁しても可動鉄心が振動し、正常には動作しないことがあります。全波整流回路では脈流分が少ないため、より安定的な動作は得られますが、図7 のように平滑コンデンサを使用することで、より電源の安定化を図ることが可能です。

標準モデルタイプの「絶縁抵抗」「耐電圧」は、常温、常湿の条件下でコイルとフレーム間の規格として、SDC タイプのSDC-0740(7M)以下、自己保持形のKPS-0740(7R)以下の小型のもの、及び、チューブラ形、CA、DKS シリーズ等は、『絶縁抵抗:DC250V メガ、100MΩ 以上、耐電圧:AC500V 50/60Hz 1 分間(常温・常湿)』とし、SDC-0825(8AK)以上、KPS-0827(8W)以上の大きいものは、『絶縁抵抗:DC5000V メガ、100MΩ 以上、耐電圧:AC1000V 50/60Hz 1 分間(常温・常湿)』を規格としています。
保存温度範囲は、-30~100℃、使用温度範囲は、-5~40℃、にて設計しています。
これらの範囲外で使用されるとき、不明な点など当社までお問合せください。

自己保持形ソレノイド(KPS)は、SDC タイプのソレノイドに永久磁石を内蔵させたものです。無通電状態でも永久磁石の磁力による保持力(無励磁保持力)が得られ、長時間の無通電保持が必要な用途に最適です。

19-1.吸引動作

  • 内蔵の永久磁石の磁気力に、励磁コイルによる電磁力が加算されるように通電し、吸引力を増加させ可動鉄心を吸引します。
  • 動作電圧の印加時間は、ストロークや負荷などによって異なりますが、30~150ms 位で動作します。

19-2.復帰動作

  • 無励磁保持状態の可動鉄心を復帰(開放)させるには、永久磁石の磁力を打ち消すように、吸引動作と逆極性の電流をコイルに加えて保持力を小さくし、スプリング等の外部の戻し力によって可動鉄心を引き離します。復帰動作電流(電圧)は、保持力が戻し力よりも小さくなるように設定する必要があります。
  • KPS ソレノイドに通電したときの保持力の変化は、図8 のようになります。電流0 のときの保持力(無励磁保持力)は”A”です。コイルに加える復帰電流を0 から徐々に大きくしたとき保持力は徐々に小さくなり、”B”に達すると永久磁石の磁力を完全に打ち消して保持力は0 になります。さらに復帰電流を大きくすると励磁コイルによる保持力が発生して徐々に大きくなり、”C”に向かって変化します。

可動鉄心を引き離すには保持力が戻し力よりも小さくなるようにI1~I2 の範囲の電流を加える必要があります。
電圧を加える場合は、E=R×(I1+I2)÷2 がほぼ最適値になりますが、コイル抵抗値(R)は温度によって変化しますので、使用温度範囲とソレノイドの自己発熱を考慮して決める必要があります。
復帰電圧(電流)の印加時間は、コイルのインダクタンスや戻し力の値によって異なりますが、概ね30~100ms です。
これらの電流値・電圧値は、ソレノイドの種類とコイルの定格、戻し力によって異なりますので、当社までお問い合わせください。

当社のKPS タイプのソレノイドは、2 リード式(動作・復帰コイルが共通)を標準タイプとしていますが、特注品として動作コイルと復帰コイルをそれぞれ独立に設け、一端を共通端子とし3 リード式も製作可能です。

3 リード式(KPS タイプ)
1つのボビンに2 つのコイルを巻くので、吸引力の効率(同じ電力での吸引力値)は2 リード式よりも劣りますが、復帰コイルが独立していますので、動作電圧と同じ極性・同じ電圧値での使用が可能です。

19-3.駆動回路

  • 駆動については、使用方法により色々な工夫がありますが、参考までに、一般的な回路例を図9~図12 に示しました。

カタログの外観図が標準タイプのジョイント形状となりますが、上記の形状も製作可能です。
また、お客様のメカ機構に対応した形状やサブASSY(スプリングピンを使用した金具の取り付け等)も対応しております。詳細は、当社までお問い合わせください。

ご希望により、部品番号、その他をマーキングすることができますので、当社までお問い合わせください。

ソレノイドに関するお問い合わせはお気軽にどうぞ!